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INTERVIEW
束芋
2007.11.2 UP
独特な世界観でつい見入ってしまうアニメーションを発表している束芋。広告デザイナーを目指したり、大学で教鞭をとったこともありながら、現在は作家としての道を選んだ。アーティストとしてどのように作品に向かうのか、どのように自分のすべきことを選択し、判断していくのか。本音でしか語らない、束芋の作家道。

就職活動〜作家への道

束芋さん大学を卒業して一年目の1999年に「にっぽんの台所」でキリンコンテンポラリーアワードの大賞をいただいて、その次の年にキリンプラザでの個展(2000年)が決まりました。
キリンコンテンポラリーアワードは、就職活動のために応募したんです。大学を卒業したら、広告関係に就職してグラフィックデザイナーになろうと思っていました。でも就職活動のとき履歴書に書けることがなくて、それでひとつくらいは賞をもらいたいな、と思いました。私自身がはじめて妥協せずに作ったものなら、何かしらの評価を得られるかもしれない。それを引っ下げて就職活動しよう、と。そうしたら賞をいただいて、個展も決まった。ひとまず就職活動はやめて、制作に専念しようと決めたんです。

グラフィックをあきらめアートへ

作家とグラフィックデザイナーの決定的な違いは、制作期間です。私は、ちゃんとしたものを作ろうと思うと、たった五分のものでも一年かかる。でも広告は本当に早い。これは私には無理だと。私、すごくわがままなんです。だからクライアントがいる仕事って無理なんです、私には(笑)。
2003年に五島文化財団から賞をいただいて、その在外研修で、グラフィックデザインの勉強のためにイギリスに行きました。ジョナサン・バーンブルックというデザイナーが好きで、彼のデザインの仕事を近くでみたくて、3ヶ月研修にいきました。
ストイックで、しかもきっちりとクライアントの要望を踏まえている。そしてパワーがある。彼はデザインが世界を変えられるって思っているし、それだけの力もある。
それだけ世界的なデザイナーであったら、何十人もスタッフがいると思っていたんですが、彼は2人雇っているだけ。とにかく自分ひとりでやってる。大勢のスタッフがいると逆にやれないことがある。私がデザイナーになるんであれば、そのレベルにまで行きたいと思いつつも、自分には無理だって確信してしまった。
でも、ジョナサンのそのスタンスを自分だったらどう実現できるか考えました。自分のスタンスを貫き通すことができる場所、それが今の作家の立場なんです。

教える、ということ

束芋さん私は京都造形芸術大学出身です。大学がまだそんなに大きくないころは先生との距離も近くて、学科ごとの横のつながりも濃密でした。学生同士の影響も大きかった。こじんまりしていたからこそ、いろいろなものを全部得ることが出来ました。

短い期間でしたが、大学で教えるという機会をもらいました。そのころ年齢的に学生と近かったので、見えちゃうんです。つい腹が立って言っちゃう、「これは精一杯やってないでしょ?」とか。
とにかく全力を尽くした作品でないと、私には評価できない。もちろん、学生にいくらでもアドヴァイスはできます。でも、私は学生にしゃべりすぎるんです(笑)。
学生に自分で回答を出す、ということをさせないと持ち帰る回答が軽いものになってしまうんですね。良い先生というのは、学生に遠くまで回答を取りに行かせる。そういうことが私にはできなかった。
先生としての才能のある人は、その世代が考えるために必要なこと、というのも考えてます。私には、そこまで考える余裕がなかった。それで、教えることよりも、作家として作品を作ることを選んで、大学を辞めました。

目の前にあることをこなす

私は、もともと課題を与えられないと作業が進まない性格です。どんどんアイディアが沸いて出てくるタイプではないから、作品を作るのにも時間がかかります。
でも、今は私の目の前にあることがすごく明確です。何日までに何をしなくちゃいけない、という課題もある。それが目の前にあるから、その先のことは悩んでいられないし、悩みの原因があれば、それは断ち切っていく。作家として、何が必要で何が不必要なのかを自分できっちり選択していく必要があります。

現代美術ブーム!?

今は、日本でもちょっとした現代美術ブームになっています。もちろん展覧会や発表の機会をたくさんいただけることは悪いことではないですが、でもそれが作家にとって本当に良いことなのかというと、それは必ずしも合致しない。
自分にとってこの仕事をするべきかどうかは作家が決めなければならない。すべきでないことは、作家が断らなければいけない。その判断ができるかどうか。それも含めて作家の才能ということになります。

コラボレーション──作品を預ける

束芋さんオハッド・ナハリン(イスラエル、バットシェバ舞踊団の振付家)とのコラボレーションは、私の「にっぽんの湯屋」を見たオハッドから話をもらったんですが、彼がすばらしい振付家だということはイスラエル人からも聞いていました。とはいえ、出来上がった作品をアレンジする妥協のようなコラボレーションは意味がないと思い、実は何度か断ったんです。
それでも、とにかくイスラエルにおいでということで招待していただき、「なんでこれ(銭湯)で作品を作りたいの?」、「オハッドは銭湯に行ったことある?」とか聞きました。
それに対してオハッドが「銭湯には行ったことないけど、日本は長い伝統を引き継いできて、束芋はその上で意識して作品を作っているかもしれない。でもイスラエルは建国して50年しかたってない。自分は歴史も何もない状況で作品をつくることがすごく合っているんだ」と答えました。
それを聞いて、私とオハッドでは作品の作り方も、考え方も違う。でも、この作品をオハッドに預けちゃえば、めちゃくちゃなことしてくるんじゃないか、私自身も面白いと思える展開があるんじゃないか、と考えるようになりました。
こういうコラボレーションははじめてでしたが、最終的に、自分の作品がこんなに違った形で舞台作品になることは刺激的でした。

ダンス・インスタレーション『FURO』

振付:オハッド・ナハリン
ステージデザイン、映像:束芋

にっぽんの湯屋(男湯)イスラエルのダンスカンパニー・バットシェバ舞踊団の芸術監督オハッド・ナハリンと束芋のコラボレーション作品として2006年3月に発表。アニメーション作品「にっぽんの湯屋」をベースに創作された。
束芋による閉所恐怖症的なステージデザインとアニメーション空間の中で、オハッド・ナハリンの衝動的な演出と振り付けによるダンスが行われた。爆音のサウンド、身体の重さを感じさせるダンス、そして束芋の映像空間が効果的に構成されたコラボレーションとなった。

(2007年8月 銀座・そば所よし田にて TEXT:飯名尚人 PHOTO:室谷亜紀/office北北西)
INTERVIEW:束芋 Part 1 / Part 2
Profile: 束芋
たばいも 現代美術アーティスト

1975年、兵庫県に生れ。'99年、京都造形芸術大学芸術学部情報デザインコース卒業。同年、「にっぽんの台所」でキリン コンテンポラリー・アワード '99 最優秀作品賞。'02年、第13回五島記念文化賞美術新人賞。'05年、第12回日本現代藝術奨励賞。

主な作品:
「にっぽんの台所」('99年)、「にっぽんの横断歩道」('99年)「にっぽんの湯屋(男湯)」('00年)、「ユメ・ニッキ・ニッポン」('00年)、「にっぽんの通勤快速」('01年)、「にっぽんの御内」('02年)、「ユメニッキ・ニッポン」('02年)、「お化け屋敷」('03年)、「」('06年)、「真夜中の海」('06年)、「ギニョラマ」('06年)、「dolefullhouse」('07年)

主な展覧会:
横浜トリエンナーレ2001−メガ・ウェイブ新たな総合に向けて」('01年、横浜)、第25回サンパウロ・ビエンナーレ 大都市のイコノグラフィー('02年、サンパウロ、ブラジル)、個展「束芋:おどろおどろ」('02年、東京オペラシティ アートギャラリー、東京)、個展「束芋:夢違え」('03年、ハラ ミュージアム アーク、群馬)、個展('05年、James Cohan Gallery、ニューヨーク)、「束芋 指弁」('05年、ギャラリー小柳、東京)、第15回シドニービエンナーレ Zones of Contact('06年、シドニー、オーストラリア)、ヨロヨロン 束芋('06年、原美術館)、TABAIMO('06年、カルティエ現代美術財団)、第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ('07年、イタリア)

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アニメーション
公衆便女(こうしゅうべんじょ)』所収


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