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INTERVIEW
佐東利穂子
2008.12.12 UP
横浜トリエンナーレ2008でダンスパフォーマンス『勅使川原三郎+佐東利穂子 時間の破片─Fragments of Time』が行なわれました。間口約2.5メートル、奥行き約10メートルの真っ白な壁に囲まれ、観客側にのみ開かれた小さな空間。左右の壁の全面にガラスの破片が突き刺さり、床一面にもガラスの破片が敷き詰められている。音楽と連動したほの暗い透過光、煌めく反射光。この空間装置自体がインスタレーションとして展示されましたが、この刺激的な空間での勅使川原三郎、佐東利穂子の各回どちらか1人によるパフォーマンスは大きな話題を呼びました。今回は硬質、かつ柔らかなダンスを見せてくれた佐東利穂子さんにこの作品を中心に、ダンスと身体について語っていただきました。

ガラスを水のように感じる

時間の破片─Fragments of Timeよく「ガラスは怖くないのですか?」という質問をいただきますがガラスは怖くないんです。
踊る時はいつでも、その環境というものがまずあって、そこに「存在する/いる」ということを受入れることから始めます。ガラスもそういった出会いのひとつで、自分の接し方によって変わるものだとわかりました。ガラスを怖いという感覚ではなく接していると、水のように感じることがあります。
寝転んだりする時も、もともと不安定なものだということを受け入れて、身体の緊張感がなくなると、柔らかいものだと感じることができます。

ガラスとの会話

この作品の前にも『ガラスノ牙』(2006年初演)という作品を新国立劇場でやったのですが、それが私にとってガラスの上で踊る初めての経験だったんです。
最初にガラスの上で踊る時に勅使川原三郎さんにガラスは怖くないものだと言われました。私は実際に体験しないとわからない、頭だけでは理解できないところがあるんですが、ガラスの上に実際に乗ってみると、むしろ会話をしているような感じがしました。
自分の接し方、足の置き方、重心のかけ方によってガラスの方も私を受け入れくれるし、普通の床ではありえない反応が返ってくるんです。
普通の床の上ではバランスをとることに慣れてしまっているので、立っているだけではバランスが崩れるということはありませんが、ガラスの上では自分が何かをしようと思わないで立っていても、すでに不安定で、身体が揺れているんです。ガラスの上は違う状態なんだと理解し、感じたんです。
ガラスの状態によって私の身体や動きも変化する。それはまるで終わりのない会話をしているような、とても貴重な体験でした。

小さな空間の中に体が溶けてしまう感覚。

あんなに狭い空間で踊ったのは初めてで、やってみるまでは、それが何を意味するのか、そこで何を感じるのかは、分かりませんでした。観客との距離が近いという事は想像していましたが、実際にその場に立ってみると、観客が同じ空間の中で息を潜めている気配をとても強烈に感じました。観客までも装置の一部、そこで呼吸している人たちも壁も含めて自分を取り囲む空間として密度濃く感じました。
照明は25分で1サイクルになっていますが、踊りのパターンは決まっていません。音楽のサイクルは20分ぐらいで2曲を重ねています。それぞれがループされているので照明の動きと音の合わさり方で、空間の動きが出てくるんですね。
この照明と音の関係が微妙にずれていくことで身体の動きが出てきます。また、ガラスの無数の反射によってあの小さな空間がひろがり、私自身の身体がなくなってしまうような、溶けてしまう感覚になりました。

環境の中での存在として

佐東利穂子さん踊っているときに私は「こういう人」として踊っているという感覚はありません。名前が無いというか、身体だけがあるというか、ひとつの生き物として生息している……。普段の名前があってこういう性別でこういう性格の自分、という事ではなく、周りがどういう環境でどこにいるかによって、そこでの存在の仕方が生まれる、と感じています。
周りとの関係によって自分の身体、存在が見えてくるのであって、前もって準備した自分としているのではないんです。
だから身体の動きも、いわゆる振付として決まってるのではなく、その時々の環境によって変化していくんです。身体の状態や周りの環境の変化、例えば『時間の破片』では照明が変わっていきますよね。音楽も変わり環境自身も動いている。その中で自分が動き続けて周りとの関係が出来てきます。

「呼吸」と身体の拡張

時間の破片─Fragments of Timeトリエンナーレでのパフォーマンスのための練習という事は特にしませんでした。踊っている時に、危険に思われたかもしれませんが、かなり壁のガラスの破片の近くに身体や顔を寄せる事はありましたが、それは私にとってはちっとも危険な事をしていることではないんです。
それは、普段どんな状況で踊っている時でも、自分の身体の周りに対する意識が鋭敏に働いているからです。そのような意識や感覚は日々の稽古の積み重ねから養われるものだと思っています。そこでは呼吸がとても大きな役割を果たします。
吸って吐いてを繰り返す「呼吸」というものは自分の身体の外側と内側を行ったり来たりするわけですが、そのことを意識することで、自分の身体がこの形だけに収まっているものではないのだという感覚を持つことが出来ます。「呼吸」というものをリアルに意識し、体験することで、身体の周りの空気や空間に対する意識がひろがり、身体も含めたものとして周りの空間を感じるようになります。あるいは外側に向かって開いて行く身体を感じます。
そういう意識の持ち方がどんな環境に身体を置く場合でもあります。すると、ガラスも怖いものではなく、そこにあるものとして受け入れることができるし、目では見えない背後の空間も、身体で感じ取ることができるのです。

次号へ続く
(2008年11月 東京・KARASスタジオにて 
TEXT:山本晃  PHOTO:広瀬壮太郎/office北北西 )

INTERVIEW:佐東利穂子 Part 1 / Part 2

 

Profile:佐東利穂子
さとうりほこ 
KARAS/ダンサー

神奈川県出身。15歳まで英国とアメリカで育ち、ジムナスティックを学ぶ。帰国後ダンスを始め、1995年からKARASワークショップに参加。1996年にKARASメンバーとなって以降、勅使川原振付の全てのグループ作品に出演。『KAZAHANA』ではソリストとしてその繊細で鋭利な独特の質感のあるダンスが国際的に高く評価される。2005年4月ローマで初演した『Scream and Whisper』では、共演のヴァスラフ・クーニェスとともに、仏・伊ダンス雑誌「Ballet 2000」の2005年度年間最優秀ダンサー賞を受賞。『消息』で、2007年度日本ダンスフォーラム賞受賞。近年は、勅使川原の演出・振付助手も務めている。

KARAS公式サイト
http://www.st-karas.com/

「勅使川原三郎 + 佐東利穂子 《時間の破片─Fragments of Time》」
振付・美術・照明・衣裳:勅使川原三郎/出演:勅使川原三郎、佐東利穂子
2008年9月13日〜11月16日 
※インスタレーション展示は11月30日まで
横浜 横浜トリエンナーレ2008会場
http://yokohamatriennale.jp/2008

● 公演予定

「勅使川原三郎 ダブル・サイレンス─沈黙の分身」
振付・美術・照明・衣裳:勅使川原三郎/出演:勅使川原三郎、佐東利穂子、他KARASメンバー
2009年3月21日(土)〜29日(日)
東京 Bunkamura シアターコクーン
http://www.bunkamura.co.jp


● 関連商品

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● イメージエフ関連サイト

「身体の冒険 ダンス・舞踏・バレエ Part.1」
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