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INTERVIEW
インタビュー:坂口恭平 Part 2
2010.8.13 UP
都市の副産物であるゴミや不用物を転用して「家」を建てて暮らす路上生活者に、都市をより創造的に、面白く生きる知恵を見出し、私たちに提示してくれた坂口恭平さん。頭の中はすでに次の、そしてさらに次の活動に飛んでいるようだ。そんな彼の思想のバックグラウンド、そして今後の活動について伺いました。 (聞き手:山田真由美)

「手入れ」ができない現代人

坂口恭平路上生活者の人たちは小さな3畳に満たない空間でも自分の「家」と思えて、ひと月に3万円で5000円貯金できるような生活をしている、この東京で! 彼らは革命をしているわけですよ。何にも染まらず、自分だけの価値観を創り上げて、そこで生きることを選んでいる。鈴木さんを見ていると、どう考えてもホームレスなんかじゃない。人間の根源的な営みを突き詰めて考えて実践して、それを未来につなげようとしている人です。貧しさのかけらもない。
それに比べて、僕らはどれだけ貧しいかと思う。自分の力で自分の家を建てられないし、壊れてもろくに修理もできない。本来、家には手入れが絶対必要で、修繕を重ねることで家自体がふくらんでくるものだと思う。生き物みたいに。
隅田川の鈴木さんの家を見ていると、全体の形は変わっていないんですが、構成している部品は髪の毛や爪みたいにその都度生まれ変わっている。鈴木さんがチャリンコに乗って、ゴミとして落ちている端材を見たときに、家のどの部分に使おうかと「モノ」と相談をしている。そういう考えをしないのが現代人なんですよ。これをやり続けていたら、とんでもない生き方なんじゃないかと思う。路上生活者の人たちだって最初から技術を持っていた人なんかいなくて、「やらなければいけないと思ってやったらできた」と言っている。必要に迫られたら人間はたいていのことができる。人間の本能が枯渇していない証拠です。

現代のテクノロジーと手仕事

こうした僕の考え方というのは、いろんな先人の影響を受けているんですが、やっぱり恩師である石山修武先生の影響が大きい。考え方の設計図を全部つくってもらったと思っています。彼はよく、アポロ13号の話をするんですが、1970年にアポロ13号は月に向かう途中で故障、Uターンして地球に戻ってきました。面白いのはどうやって修理したかなんです。飛行士たちはガムテープみたいなものを使って修理して地球に戻ってきたというんです。しかも重要なのは、当時の最先端の通信手段を使ってNASA本部とやりとりをして、修理の仕方の指示を受けたという。石山先生はその事実を知って、ビーンときた。これからの時代、ネットなど現代のテクノロジーを使いながらも、自分の手ですべきところは手仕事で行うのだと。

都市に実がなる

坂口恭平だから、僕がのちに路上生活者の人たちに出会って、ブリコラージュを実践している人たちがいるんだ!と発見したときの衝撃は大きかった。彼らは日本で唯一のバナキュラー(風土)的建築をやっている。使っているのは、ゴミの中から拾ってきたアルミとかブルーシートなどの人工物なんですが、彼らはそれを人工物とは思っていない。「自然素材」であり、そうしたゴミのことを「都市に実がなる」という言い方をしていました。だからあえて「0円ハウス」と名づけた。路上生活者の人たちは何かが欲しいからお金を手に入れるというのではなく、都市にはすでにあるからそれを狩猟採集していくだけという。僕はそれを「都市型狩猟採集生活」という表現に置き換えた。ゴミのことを「都市の幸」と置き換えたように。 そんなふうに、僕は一般的にはマイナスだったり、ネガティブなものとしてとらえられているものを、むちゃくちゃポジティブだったり、むちゃくちゃ先進的なものに置き換えようとしているんです。中沢新一さんが僕のことを「フライングすれすれの突出者」と言ってくれましたが、僕がやっていることは確かにフライングだと思う。でも、フライングはしないといけない。フライングが表現なわけだから。

次は住宅を0円にする

坂口恭平僕が次に考えているのは、0円ハウスを実際に建てること。つまり住宅を0円にする試みです。この構想のために、今、土地の問題について調べています。土地はそもそも誰のもので、それを売ったり買ったりするようになったのはなぜか。お金を持っていない人は土地を手にすることができない状況をつくってしまったのはなぜか、といった土地の歴史と土地所有問題について考察し、僕たちが無料で享受できる土地はないのか、探そうと思っています。いずれ本にするつもりなのですが、驚いたことに類書がないんですね。唯一、こうした土地問題に言及している作家が一人いて、司馬遼太郎なんです。彼は『土地と日本人』という本の中で「土地公有論」を提唱している。しかも宮崎駿監督の新作は『借りぐらしのアリエッティ』でしょ。本来、人間は「借りぐらし」なはず。一体いつから所有するという感覚を持ったのか。「借りぐらし」とは「借り」と「狩り」のダブルミーニングと聞き、さらに納得しましたね。
やっぱりこれからは、土地もお金もない人間が、すでにあるものを使って、たとえ稚拙であっても自分たちの手でつくる時代なんです。その試みというか、実験として、駐車場に「動く家」を建てるプロジェクトが始まっています。雑誌『すばる』の9月号からそのレポートを連載するのですが、今の建築基準法では車輪がついていたらどんなに家の形をしていても「住宅」ではなく「車輌」としかみなされないんですね。だから家に車輪をつけてしまえと。駐車料金は月々2万円弱程度。電気はソーラーパネルとバッテリーで賄えば、0円ハウスに近いモデルケースができると思っています。

多摩川河川敷の、未来的な生活を映画に撮る

今までは文章で自分の思考を表現してきたんですが、映像メディアは海外の人たちにも伝えやすい。そこで、8月から映画を撮る予定です。自分が取り組んでいることは世界中多くの国で問題になっていることですから、共通の認識があると思うんです。実際、『TOKYO 0円ハウス0円生活』を持って海外を回ったときは、日本よりも海外のほうが反響が大きかったぐらいです。
映画は、多摩川の河川敷に住む路上生活者の人たちの生活を追いかけたドキュメンタリーです。多摩川にはたくさんの路上生活者が集まっていて、一つの村をつくっている。共同で野菜を作ったりして、その中に自分も加えてもらって、1カ月ぐらい一緒に生活したんですが、隅田川の鈴木さんみたいな人もいて、またいろんな発見がありました。路上生活者の生活は見た目こそあまりよくはありませんが、ちゃんと検証すれば確実に未来的な生活をしている。これこそ最先端の都市の利用方法じゃないかと思う。そういう構造を世界に伝えられるようにしたい。

安藤忠雄さんと議論を

でも、まずは8月発売の『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』を多くの人に読んでいただくことが重要課題。ライブストリーミングサイトDOMMUNEで「都市型狩猟採集生活」のレギュラー番組を持っていて、中沢新一さん、養老孟司さんをゲストにお迎えして刺激的なトークを展開させてもらったのですが、次回ゲストに安藤忠雄さんをお迎えしたいと思っています。安藤さんのことはものすごく尊敬している建築家の一人なんですが、やっぱり建築飽和の時代に「建てない」という選択肢はあり得ないのかということを、ぜひ議論してみたい。安藤さんのアイデアをぜひ聞いてみたいですね。坂口恭平

(2010年7月 東京・J.S. BURGERS CAFE新宿店にて 
TEXT:山田真由美 PHOTO:室谷亜紀

INTERVIEW:坂口恭平 Part 1 / Part 2

 

Profile:坂口恭平
さかぐちきょうへい 建築家・作家・アーティスト

1978年熊本生まれ。大学進学を前に建築家・石山修武設計の「幻庵」に出会い、建築家を志す。 早稲田大学理工学部建築学科にて石山氏に従事。在学中より、「生きていくための建築」とは程遠い現代建築に疑問を持ち、人が本来生きるための建築とは、生活や環境も含めた空間とは何かを模索するようになる。そのようななか、隅田川でソーラーパネルを使って自家発電している路上生活者の「家」に衝撃を受け、東京の路上生活者が暮らす総工費0円の家の調査を開始。2004年、日本の路上生活者の住居を収めた 写真集『0円ハウス』(リトルモア)を刊行。 2006年、カナダ、バンクーバー美術館にて初の個展、 2007年にはケニアのナイロビで世界会議フォーラムに参加。 2008年には、隅田川に住む路上生活の達人・鈴木さんの生活を記録した 『TOKYO 0円ハウス 0円生活』(大和書房)を発表し話題を呼ぶ。翌2009年には自身も実際に多摩川生活を経験。 他の著作に『隅田川のエジソン』(青山出版社)、『TOKYO一坪遺産』(春秋社)など。最新刊『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(太田出版)が8月4日より発売予定。

坂口恭平オフィシャルサイト
http://www.0yenhouse.com/


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