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INTERVIEW
ペドロ・コスタ
2008.5.9
新作『コロッサル・ユース』でも『ヴァンダの部屋』同様にDVカメラで撮影されている。既存の映画界を拒否して制作するアーティスト、ペドロ・コスタ監督が語る「映画」と「記憶」。 (聞き手:中島崇)

撮影の儀礼的側面

ペドロ・コスタさん「先ほどのヴィデオに関することで付け加えると、たとえヴィデオで撮っている場合でも映画が持っていた儀礼的な側面を保持しなければいけない。
確かにヴィデオには映画撮影における神話的または儀式的な部分はありません。つまりスイッチオンすれば何時間でも撮れてしまう。ただ私たちが映画を撮る時、ショットには1回性のようなものがあるのだと、私自身も考えています。その1回性を考えた時に儀礼的ないし礼典的なものを態度として守っていれば、ヴィデオだろうとそうでなかろうと、それは私にとっては関係のないことです。
いわゆる実験映画……特に1960年代のですね、あるいはドキュメンタリー映画というものを愛しすぎてはいけないと私は考えています。
というのはこれらは映画撮影の儀礼的な要素をほとんど考慮に入れていないからです。つまりこの部屋で友人たちと話しているところを映画に撮る、あるいは隠しカメラで普段の生活をしている人々を撮るといった時に、映画撮影が持つ儀礼的な側面は失われていると思います。
私が採っている方法はむしろ伝統的なものです。様々な要素から一つの1回性に向けた状況を作り上げていく。そこには始まりと終わりがあり、その間には「聖」的な時間があります。ちょっと私の宗教的な側面とでも言いましょうか(笑)。」

駆動する力

ヴァンダの部屋/コロッサル・ユース ──『ヴァンダの部屋』が額に入った一枚の絵だとすれば、『コロッサル・ユース』は複数の絵が展覧された画廊か美術館のような空間の広まりを見せています。映画では主人公のヴェントゥーラが子どもらしき人達を尋ねて移動しますが、観客である自分もいつしか親しみをもって一枚一枚の絵を克明に見ては移動する感覚に襲われます。

「あなたのおっしゃる意味はよく分かります。『コロッサル・ユース』は、何か失われてしまったものについて語っている映画だと考えています。全ての登場人物が自分が抱えている欠如について話し、考えている映画であると。
ヴェントゥーラという登場人物は過去の力によって支えられている人間です。彼が画面の中にいることで何かが想起される。それは言葉でありイメージであるわけですが、例えば彼が部屋に入るあるいはヴァンダの隣に座ることによって他の人が喋り出す。あるいは過去のイメージがそこに浮かび上がる。そういう駆動する力を彼は持っていると思います。
このことはある意味で、私たちに別のイメージを探さなくてはいけないのだと訴えている、というふうにとることもできると思います。つまり我々は想像力を失ってしまったわけです。
生のためにはこうした想像力を作っていかなければならない。
それを基にして美術館のシーンを考えてみると、そこは完全にヴェントゥーラの世界であるわけです。ある種の過去の集積ですね。アンティークが満ちあふれている、それはイメージである種の調和がとれていた時代。他の場面が過去を失った人々によって構成されたとすれば、この場面だけに明らかに絵画が多く描かれています。」

記憶をし直すこと

 ── 一見異様に感じるのは、ヴェントゥーラが会う人会う人に妻へのロマンティックな手紙を暗唱するように強要することです。「愛しき妻へ 今度会えれば30年は幸せに暮らせるだろう。……土産は10万本のタバコと流行のドレスを10着あまり、車も1台……」という台詞は、特別哲学的でも何かの教訓を伝授させるためのものでもない。この比較的長い台詞を省略することなく何度も繰り返し使った意図はどこにあるのでしょう。

ペドロ・コスタさんなぜあんなに繰り返されたのか自分にも不思議に思います。
ただこの手紙は単なるラブレターを超えて別のものになっていると思っています。つまりあの手紙そのものが映画全体の原理を示すある種のマニフェストになっているかもしれません。
ヴェントゥーラが映画の中でしている作業と私がこの映画を撮ることにおいて行った作業は、もう一度物事を正しい配置に置き直したいという欲望からくるものです。
それはどういうことかというと、記憶をし直さなけばいけない、人を思い出さなければいけない、と考えていました。
今日人は物事にあまり配慮をしません。どちらかというと注意力散漫なわけです。ですから5回も繰り返したというのは、ああしなければ忘れてしまうからということもあると思います。
あの手紙は愛や肝要について語っていると同時に、何か恐ろしいことがこの先到来するのではないかという予感、その二重の側面を持った手紙としてあるのではないかと思っています。」

詩を記憶すること

ペドロ・コスタさん「一つのエピソードを付け加えます。このヴェントゥーラの手紙は何か彼自身の抵抗の方法を示している、そういうものかもしれません。
映画を撮った後で知った一つの話があります。ロシアの詩人オシップ・マンデリシュターム※1に関することで、彼はスターリンによって最終的には政治犯収容所に送られてしまうわけです。1938年、KGBがやって来る直前に自分が逮捕されることを知りました。彼らがやって来れば自分が残した思考を書いたものや詩が処分されるだろうと気づき、まさにKGBが来る寸前に妻を呼びこう言ったのです。
「今から僕は詩を書きます。ただし紙に書くことはできない。だから君に記憶してもらいたい」と。
没収を逃れるために、彼は口で詩を作り上げて妻は記憶しました。この詩は実際に妻が書き起こしたことで実在しています。
このエピソードは、たまたまだけれどもヴェントゥーラの手紙とクロスして不思議に思っています。」

 ──最後に、将来ポルトガルを出て映画を撮る希望はありますか?

「あまりないです。日本以外は。」

 ──ぜひとも実現を祈っています。


※注釈
1:オシップ・マンデリシュターム:1891〜1938。ポーランド出身のユダヤ系ロシア人の詩人。象徴主義に反発し新しい潮流を築くが、ソ連のスターリン政権下、創作が反政府活動と見なされ、収容所で獄死する。

(2008年4月 渋谷にて TEXT:中島崇/映像作家 PHOTO:室谷亜紀/office北北西)
INTERVIEW:ペドロ・コスタ Part 1 / Part 2
Profile: Pedro Costa
ペドロ・コスタ 映画監督

1959年、ポルトガルのリスボン生まれ。リスボン大学で歴史と文学を専攻。青年時代にはロックに傾倒し、ロックパンクのバンドに参加する。その後、国立映画学校に学び、アントニオ・レイスらに師事する。ジョアン・ボテリョ、ジョルジェ・シルヴァ・メロらの作品に助監督として参加。'84年、短編『ジュリアへの手紙』を監督。'89年、長篇劇映画第1作『血』を発表。以後、映画プロデューサー、パウロ・ブランコのもとで『溶岩の家』('94)、『骨』('97)、『ヴァンダの部屋』('00)、『コロッサル・ユース』('06)を監督。現代映画を代表する映画監督として、アート界を含め世界的に注目されている。

フィルモグラフィ
1984年 短編『ジュリアへの手紙:Cartas a Julia』
1989年 長篇劇映画第1作『血:O Sangue』( '89年ヴェネチア国際映画祭出品、'90年ロッテルダム映画祭出品)
1994年 『溶岩の家:Casa de Lava』('94年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門出品、'94年テサロニキ映画祭・最優秀芸術貢献賞、'94年ベルフォール映画祭・最優秀外国映画賞
1997年 『骨:Ossos 』('97年ヴェネチア国際映画祭出品
2000年 『ヴァンダの部屋:No Quarto da Vanda』('00年ロカルノ国際映画祭・青年批評家賞・スペシャルメンション受賞、'01年山形国際ドキュメンタリー映画祭・最優秀賞・国際批評家連盟賞受賞、'02年フランス文化賞・最優秀外国映画作家選出
2001年 『ダニエル・ユイレ/ジャン=マリー・ストローブ 映画作家の微笑みはどこに?:Daniele Huillet,Jean-Marie Straub Cineastes-Ou Git Votre Sourire Enfoui?」('01年ヴェネチア国際映画祭出品)


2006年 『コロッサル・ユース:Juventude Em Marcha』('06年カンヌ国際映画祭出品)
2007年 短編『タラファル:Tarrafal』、短編『うさぎ狩り:The Rabbit Hunters』

● 『コロッサル・ユース』
監督:ペドロ・コスタ/撮影:ペドロ・コスタ、レオナルド・シモンイス/出演:ヴェントゥーラ、ヴァンダ・ドゥアルテ、ベアトリズ・ドゥアルテ、イザベル・カルドーゾ、グスターヴォ・スンプタ、シラ・カルドーゾ、アルベルト・バロス・“レント” 、アントニオ・セメド・“ニューロ” 、パウロ・ヌネス
2006年/155分/カラー/ポルトガル、フランス、スイス/配給:シネマトリックス
劇場公開:東京・イメージフォーラム(5.24〜)

映画『コロッサル・ユース』公式サイト
http://www.cinematrix.jp/colossalyouth/

映画『ヴァンダの部屋』公式サイト
http://www.cinematrix.jp/vanda/


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