DVDの内容紹介
● 「ジョン・ケージ(1912−1992)はフルクサスの年配格として、30年代後期より実験的に活動したが、飯村によって1985年にビデオ・ポートレートの主題となり、1991年に発表され、2005年にDVDとなった。ケージはジェームス・ジョイスの作品に長い間魅せられ、特に「フィネガンス・ウェーク」は沢山の作品の基礎となり、もっとも有名なのは、「ロラトリオーフィネガンス・ウェークについてのアイリッシュ・サーカス」である。ドイツのラジオ局とパリのIRCAMによって委嘱され,音の記録は1979年に完成され,約1時間あり、テキストで参照される音は62のトラックをミックスし、テキスト自身は(一つのメソスティック・システムを使って)あらかじめ用意され、アイルランドの当時の伝統的な音楽演奏者による音楽とともに、ケージが読んだ。
「ロラトリオ」はケージの作品の中では古典の一つで、飯村の15分の記録「John Cage Performs James Joyce」では、ケージはこの作品の語りの核の部分を読む。その作曲は、多くのケージの作品のように、易の助けを借りている。ここで、ケージは手短かに説明して、「フィネガンス・ウェーク」からは全く文(複数)(ケージ自身の言葉)を使わず、単語(複数)、シラブル(複数)、文字(複数)のみを、易とその表現であるヘクサグラムを参照してきめたチャンスによって、異なったページから選んだ。この方法で,その本の624ページが12ページのテキストに圧縮された。これらのページの1ページをケージが持っているのを、私たちは(映画で)見ている。ケージは読み、唄い、それから、カメラとマイクに急に近づいて、囁く。スクリーンの底辺には毎回彼が使っているテキストにシンクロする2行の言葉がスーパーされている。
(映画では)飯村の存在は感じられても、見えず、彼が最初にケージの説明に応えるのを私たちは聞くのみだ。70歳代のケージの声は力強くはなく、陽がそそぐ部屋を背景に、窓から入るニューヨークの交通の騒音に対抗して語るケージを、私たちは懸命に聞く。彼の振る舞いは陽気で、一時、持っていた時計について不手際をして、雰囲気が明るくなる。この出来事はビデオの流れにはまっている。彼の先導的な行為の多くがそうであるように、アート作品とその制作の間の線は曖昧で、彼のステートメントは飯村の協力で彼の制作に助けられ、強調されている。」
マイク・レゲット(LDR−レオナルド・デジタル・レビュウ、2007年2月、MIT Press) |