DVDの内容紹介
●いまこそ、あらためて「寄り添うこと」「共に生きること」
「平和って何だろう?どうしたらみんなが共存できるの?」 韓国の映画祭から、この「人類永遠の問い」を向けられた想田和弘監督は、岡山で暮らす人々や猫たちの何気ない日常にカメラを向けた。平和と共存へのヒントは、どこか遠くではなく、自分たちの毎日の生活、足元にこそ潜んでいるのではないか。そう、思ったからだ。想田の妻の実家・柏木家に住みついた野良猫グループと、突如現れた「泥棒猫」との確執。91歳で一人暮らしをする橋本至郎と、彼をボランティア同然でケアする柏木夫妻。その夫妻自身にも迫る老い。そして、己の死を見つめる橋本の脳裏に突然蘇った、兵隊としての記憶――。台本無しで回される想田のカメラは、彼らの人生や“ニャン生”に訪れる大切な瞬間に奇跡的に立ち会う。観る者は、戦争と平和、生と死、拒絶と和解、ユーモアと切なさが同居する「生の時間」を体感し、「共に生きる」ことの難しさと可能性に思いを巡らせる。
●よく観ること、よく聴くこと──
『選挙』『精神』の想田和弘監督が今日を生き抜く、ヒントを探る。
監督の想田和弘は、選挙運動の舞台裏を赤裸々に描いた『選挙』(07年)、タブーと言われる精神科にカメラを向けた『精神』(08年)で国際的な評価を確立したニューヨーク在住のドキュメンタリー映画作家だ。リサーチや台本を排し、ナレーションや音楽を一切使わない独特のスタイル「観察映画」は、本作『Peace』でさらなる進化をみせている。本作は韓国・非武装地帯ドキュメンタリー映画祭でオープニング上映された後、世界中の映画祭から招待が殺到。東京フィルメックスでは「じわじわといろいろな思いが湧いてくる」「会場の一体感を感じた」「猫がかわいい」と、ドキュメンタリーとしては異例の〈観客賞〉に選ばれた。さらに、香港国際映画祭〈最優秀ドキュメンタリー賞〉を、ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭〈ブイエン&シャゴール賞〉を受賞。そして、ついに日本でも再び観察映画旋風が吹き荒れる!
●コメント
『Peace ピース』の舞台は、想田監督の前作『精神』に引き続き、岡山県岡山市。そこで暮らす人々や猫たちの何気ない日常をつぶさに描き出しながら、平和とは、共存とは、そしてそれらの条件とは何か、観客に問いかける観察ドキュメンタリーである。
主な登場人物は、3人の人間と野良猫たち。
柏木寿夫は、養護学校を定年退職した後、障害者や高齢者を乗せる福祉車両を運転している。車椅子ユーザーのヒデちゃんと公園を散歩したり、実家に帰省していた安田さんを施設に送り届けたり、植月さんの買い物に付き添ったり、一緒に回転寿司を食べたり…。
その傍ら、寿夫は自宅の庭で地域の野良猫たちにエサをやりつづけている。ところが最近、外部の「泥棒猫」がエサを目当てに庭へ侵入してきて、にわかに猫社会の緊張が高まっており、頭を悩ませている。
寿夫の妻・柏木廣子は、高齢者や障害者の自宅にヘルパーを派遣するNPOを運営しているが、国の福祉予算の削減で苦しいやりくりを迫られている。家では、夫の猫の餌付けのことで頭が痛い。
廣子は週に一度、91歳になる橋本至郎の生活支援に出掛ける。橋本はネズミとダニだらけのアパートに一人暮らし。生活保護を受け、身寄りはなく、己の老いと死を見つめる日々を過ごしている。タバコを吸うのが唯一の楽しみだという。寿夫の車に乗って病院へ通う彼は、「みなさんに迷惑をかけるから、早く往生せにゃあ」と口癖のように言う。
そんな橋本には、戦争中に赤紙が来て、兵隊として徴集された過去があった。ある日、その記憶が突然よみがえる…。
戦争と平和、生と死、拒絶と和解、ユーモアと切なさが同居する日常。そこに見出される「平和」と「共存」へのヒント。ナレーションや説明テロップ、音楽無しの観察映画・番外編。 |