DVDの内容紹介
● 小繋事件─入会権裁判
岩手県二戸郡一戸町小繋地域の住民は、江戸時代から慣習的に小繋山への入会により生計を立てていた。山の木々を伐採し、木の実や山菜を摘み食料としていたのである。入会は日本各地で行われていた慣習で、ヨーロッパ社会でも<コモンズ>として広く行われている。ところが、別掲年表にもあるように、明治の地租改正で土地の私的所有の考え方が日本に取り入れられた。つまり、もともと所有権者の存在しなかった山に、所有権者を定めた明治政府の施策により、山の所有者=地主が生まれたのである。小繋山にも地主は生まれていた。そして、当初の地主との間では慣習=入会は可能だったが、地券の転売により生まれた新たな地主が入会を否定したことで、60年続く小繋事件は始まったのである。
● 完成までに50年間(1960年〜2009年)
「こつなぎ─山を巡る百年物語」は1960年(昭和35年)に撮影開始、50年後の2009年(平成21年)に完成。大正時代に始まる岩手県二戸郡一戸町小繋地域の、入会権裁判の記録と、現在の暮らしを柱に展開する本作は、地域で生きていくための権利を求める闘いを通して、東北農民の暮らしをつぶさにとらえ、大正から平成に至る日本の軌跡をあぶりだす。そして裁判の記録から大きく飛躍して、これからの農業の姿や社会のあり方を示唆し、人と自然の共存や、生活するということへの根源的問いを投げかけて寄越す |