DVDの内容紹介
●世界的ダンス・ブームにあって、特に異彩を放ち注目を集めている日本のBUTOH。1950年代末からの 戦後日本のアヴァンギャルド・アートのムーブメントの渦中から立ち現れた舞踏、その創始者としての土方巽の名は今なお燦然たる輝きを放ち、様々な芸術ジャンルの多大な影響を与えてきました。 ‘73年に自らの舞踏を封印した土方巽の、映像として残された最後の公演がこの「夏の嵐 燔犧大踏鑑」です。 全共闘運動の残り火がまだ消えやらぬ京都大学構内での伝説の舞踏は、3台の8mm filmのカメラに記録されていました。この未発表の映像が、最新のデジタル技術を駆使することにより、30年の時をへて、新たな映像を付け加えられ鮮やかによみがえりました。土方巽:暗黒舞踏の頂点の映像がいまここに展覧されます。
●2003年5月のある日、渋谷駅前の巨大な三つの街頭スクリーンに突如、反時代的な異形の人々のまがまがしい動きが写し出されました。30年前の京都での土方巽らの舞踏公演の映像です。
1973年6月、超満員の観衆の前で、舞踏の創始者である土方巽は、生涯に一度、東京以外の地で踊りました。芦川羊子、小林嵯峨、玉野幸市、和栗由紀夫ほかの今も一線で活躍する弟子たちを擁した土方巽は、自ら「少女」を踊りました。尾底骨で重心を取り両手足を宙に泳がせて冒頭から挑発的なまなざし。
女たちを中心とした場面の最初の演目「草摘みの少女」。「戦争は田の草取りよりも楽だ…」飯島耕一の詩「八月の詩」を読む若き日の土方巽の肉声に、男たちが立ちすくみ、指でささやきあい、凧の糸であやつられる「盆の精霊」。公演名を「夏の嵐」と名づけた由来でしょう。
土方は二つ目の踊りに癩(ハンセン病)を出しました。ひとりであることの愉悦、孤絶感、憤怒……孤立者のあらゆる感情が凝縮した時間です。
全12景、土方舞踏世界の集大成。土方巽はこの年を最後に、舞踏手としての自らに終止符を打ったのです。
最後に映し出されるのは土方巽の生まれ故郷・秋田の映像。天上に向かって跳躍する欧米のダンスに対して、土方巽の舞踏が地を踏み床をはう独自の身振りを生み出した舞踏の原風景でもあります。
●土方巽
日本独自の舞踏の創始者。1928年、秋田に生まれる。'46年、18歳の頃よりダンスを習得。'49年、大野一雄舞踊公演に衝撃を受ける。'58年、土方巽の名でヨネヤマママコ、大野一雄と共演。'59年、「禁色」を大野慶人と共に発表、舞踊界に衝撃を与える。三島由紀夫、細江英公、澁澤龍彦らとの交流が始まる。主な舞台に「あんま」('62)、「バラ色ダンス」('65)、「肉体の反乱」('68)、「疱瘡譚」('72)、「夏の嵐」「静かな家」('73)などがある。「大駱駝艦・陽物神譚(特別出演)」('73)を最後に自ら踊ることはなく、'74年にアスベスト館に劇場開設、ここを拠点に構成、演出、後進の指導に当たります。細江英公による写真集「鎌鼬」('69)、著書に「犬の静脈に嫉妬することから」('76)、「病める舞姫」('83)、遺文集「美貌の青空」('87)、「土方巽全集」('98)などがある。1986年、享年57歳で逝去。
●土方巽 出演映画
『ジャズ娘誕生』(監督:春原政久/主演:江利チエミ/日活/1957年)
『犠牲』(監督:ドナルド・リチー/主演:土方巽(?)/短編/1959年)
『へそと原爆』(監督:細江英公/主演:土方巽/1960年)
『戦争ごっこ』(監督:ドナルド・リチー/振付:土方巽/短編/16ミリ/1961年)
『紅閏夢』(監督:武智鉄二/原作:谷崎潤一郎/1964年)
『元禄女系図』(監督:石井輝男/タイトルバック演出も/東映/1969年)
『猟奇女犯罪史』(監督:石井輝男/阿部定と共演/東映/1969年)
『恐怖奇形人間』(監督:石井輝男/一部演出振付も/東映/1969年)
『臍殿下』(監督:西江孝之/主演:榎本健一/日本映画研究所/1969年)
『日本の悪霊』(監督:黒木和雄/ATG/1970年)
『怪談・昇り龍』(監督:石井輝男/日活・ダイニチ/1970年)
『誕生』(監督:秋山智弘/脚本:谷川俊太郎/作曲:黛敏郎/主演:土方巽/学研/1970年)
『闇の中の魑魅魍魎』(監督:中平康/中平プロ・東宝/1971年)
『卑弥呼』(監督:篠田正浩/ATG/1973年)
『陽物神譚』(監督:鈴村靖爾/1975年)
『風の景色』(監督;大内田圭弥/主演:土方巽/1976年)
『1000年刻みの日時計 牧野村物語』(監督:小川紳介/1987年)
『土方巽 夏の嵐』
他にも短編の記録映像が何作品かあります。 |