DVDの内容紹介
●1990年1月27日。妻・陽子逝去。病室のコブシの花。アラキネマ「愛ノ花」は、妻が逝った後に咲いたコブシの花から始まる。モノクロームの花。妻の事を想い、行きつ戻りつしながらシャッターを切り続けた17年。「愛する人がなくなって愛が深まる」。アラーキーの愛ノ花人生。アラーキーと花との情交、その濃淡と文様が織りなすメタモルフォーゼ。生の陰画と死の陽画。刹那の狂おしさと愛おしさ。撮る花そのものも時とともに変わっていく。想いが濃密な塊となり、溶け出し、新たな姿を結ぶ。2007年1月27日、17年目の妻の命日。ふたたび、コブシの花を撮る。
●アラキネマ「愛ノ花」は2007年5月17日〜6月22日。ラットホール・ギャラリー(東京)で開催された「愛ノ花」展で公開上映された。この写真展には、1990年から2007年に掛けて撮影されたモノクロームの花作品と「KaoRi Love」(モノクロームにペインティング)が展示された。
●Arakinema:アラキネマ
映画でもなくスライドでもない。全く新しい写真表現である。写真家・荒木経惟自身の演出による写真表現を、見る側が同時体験し共有するものである。エモーショナルな動きは田宮史郎、安齋の手指による官能的なオーバーラップによってもたらされ、光を通して見るその映像に音楽が加わる。一枚の写真が光を通して闇の中にイメージを結び、次の瞬間には別の写真とオーバーラップして溶け合い混じり合い、二枚目の写真が確かなイメージを結ぶと最初の写真は闇の中に消え去る。この瞬間、この刹那、この官能。アラキネマは一つの確かなジャンルである。 |