DVDの内容紹介
●作品紹介
『SPACY』1981/10分/モノクロ・カラー/音響:稲垣貴士
82年兵庫県立近代美術館で上映、パリ市立近代美術館で上映、香港国際映画祭招待、富山県近代美術館で上映、イギリス・エジンバラ国際映画祭招待、福岡県立美術館で上映、ロンドン・ヤング・ジャパニーズ・シネマ招待上映、ポーランド・ワルシャワ現代芸術センターほか中欧3力国講演付上映(「SPACY」ほか伊藤高志作品5作上映)、スペイン、マドリッド映画週間招待、石川県立美術館で上映、ブラジル、サンパウロ国際短編映画祭招待(『SPACY』ほか伊藤高志作品9作上映)、95年フランス、クレルモンフェラン短編映画祭「短編映画の1世紀」で上映された100本の中の1本に選出、パリ、ポンピドー・センター所蔵
彼の映画はジェットコースターに似ている。視るという行為をかきまわすことは、身体的機能としての眼に挑戦すること、眼に挑戦することは、身体そのものを相手どることだ。安全で静かな暗闇に体育館を映写するだけで脂汗がにじみだす。(如月小春)
『BOX』1982/8分/モノクロ・カラー
90年ロンドン、ヤング・ジャパニーズ・シネマ招待上映
立方体のそれぞれの面に風景写真を貼りつけコマ撮りした。箱は永遠に回転しているように見えるが、実際は90°しか回転していない。この視覚のトリックは『SPACY』と基本は同じである。立体から平面へ、またその逆へと空間の認識の撹乱がねらい。(TI)
『THUNDER』1982/5分/カラー/音響:稲垣貴士
96年石川県立美術館で上映、ベルリン国際映画祭招待
この映画は、いくつかの記号系の軸を考え、これを重ねて統合した図式をもとにしてつくられているものと考えられる。コマが単位だから、視覚への反応を意味とした記号の集積をデザインし、時間の中にプログラムするといったことになる映画で、一種のゲーム的映画と言えよう。(鈴木志郎康)
『スクリュー』1982/3分/カラー/サイレント
『DRILL』1983/5分/モノクロ/サイレント
84年福岡市美術館で上映、埼玉県立近代美術館で上映、ロンドン、ヤング・ジャパニーズ・シネマ招待上映、オランダ、ロッテルダム国際映画祭招待
作者が住んでいた社員寮の玄関を撮影。一本の柱を中心にしてその左右が歪み、アナモルフォーシス画のような不安定な空間を生む。『SPACY』『BOX』と同様にたくさんの写真を素材にして作られ、映画の最後は激しい動きになるが、そのどれよりもポエティックである。(中島崇)
『GHOST』 1984/6分/カラー/音響:稲垣貴士
85年福岡県立美術館で上映、オーストラリア、メルボルン「日本現代美術展」で上映、全オーストラリア巡回上映、ワルシャワ現代芸術センターほか中欧3力国講演付上映
『THUNDER』制作時に思いついた、像を宙に浮かすアイデアを実現したくてこの作品を作った。全編長時間露光によるコマ撮り撮影。当時住んでいた会社の寮で仕事から帰って夜中撮影、朝方2時間ほど寝て出勤するという生活が続き死にそうになった。(TI)
『GRIM』1985/7分/カラー/音響:稲垣貴士
86年シカゴ・フィルムセンターを始めとして全米巡回上映、福岡県立美術館で上映
室内の様々なモノからその表皮のみが剥ぎ取られ宙を漂い他のモノに貼りつくというアイデアを『GHOST』制作時に思いつきこの作品でふくらませてみた。この作品も全編長時間露光のコマ撮り。GRIMとは“ぞっとするような”という意味。(TI)
『写真記』1986/3分/カラー/サイレント
8ミリフィルム作品は、そのほとんどが福岡で開催されている3分間映画特集「パーソナル・フォーカス」のために制作したものだ。この作品は日頃撮りためておいた日記的写真をラフな気分でアニメートしたもの。(TI)
『WALL』1987/7分/カラー/音響:稲垣貴士
87年ニュージーランド国際映画祭招待、全オーストラリア巡回上映、ドイツ、オスナブリュック実験映画祭招待、ドイツ、ケルン日本文化センターで上映、サンフランシスコ国際映画祭招待、ロンドン、ヤング・ジャパニーズ・シネマ招待上映
インテリア会社の15秒CMとして手掛けたものを発展させて完成させた作品。手に持った写真のフレームの中でレンガ造りの巨大な倉庫が激しく半回転の往復運動を繰り返す。写真という平面性を強調しながらそのフレーム内にダイナミックな奥行き感を作りたかった。(TI)
『写真記87』1987/3分/カラー/サイレント
87年福岡県立美術館「パーソナル・フォーカス」で上映
日常の様々な出来事に目をむけてその時の自分の気持ちを告白してゆくような日記映画を、自分ならではのトリッキーな手法で描きたいと思った。親戚の結婚式の写真、自宅の窓から見える景色、旅の記録写真などを様々な技法でコマ撮りしていった。(TI)
『悪魔の回路図』1988/7分/カラー/音響:稲垣貴士
91年ロンドン映画祭招待,スペイン、マドリッド実験映画週間招待
屋根の間から1本だけそびえ立つ60階建ての高層ビルが物凄いスピードで回転する映画。高層ビルを中心にした半径4〜500mの円周を48分割し、その地点から写真を撮りそれらの素材をコマ撮りしていった。当初富士山でやろうと思ったがその労力を想像してあきらめた。(TI)
『ミイラの夢』1989/5分/モノクロ/サイレント
89年ロンドン映画祭招待、香港国際映画祭招待
表層的な美の裏側はすべてが腐敗してしまっているという都会のイメージを映像化。人の姿が消え去った街の風景や装飾がはがれ臓物が剥き出しになった建造物など、“死”かのイメージを探すため東京都内をくまなく歩き回って撮った写真を素材にアニメートした。(TI)
『ビーナス』1990/4分/モノクロ/サイレント
昼下がり、わが子を抱きかかえた妻が団地内の公園にたたずんでいる。美と愛の象徴のような光景。ところがこの二人には顔が無い。彼らの消え去った場所をカメラは何かを捜し求めるように執拗にねらい続ける。家族と自分との関係とは何かを模索し始めた。(TI)
『12月のかくれんぼ』1993/7分30秒
韓国、光州ビエンナーレ1995「INFART」招待
竜太5才。自分の息子にもかかわらず時々この小さな人間は自分の何なのかと思うことがある。喜び悲しむ表情を見ていても、抱きかかえた時のぬくもりを肌で感じても、私の感情がぼんやりする瞬間がある。(TI)
『THE MOON』1994/7分/カラー/音響:稲垣貴士
95年ロッテルダム国際映画祭招待、カナダ、バンクーバー国際映画祭招待、インド、ケララ国際映画祭招待、ニュージーランド映画祭招待
むかし夢の中によく出てきた、月明かりに浮きあがる神秘的で不気味な風景。たとえば夜空に浮かぶちぎれた雲の塊が月光に照らされ、その上をまつ黒な物体がゆっくり回転しながら飛んでゆくとか……この言いしれぬ快感に満ちた不条理な風景、空間。(TI)
『ZONE』1995/13分/カラー/音響:稲垣貴士
95年ニューヨーク映画祭招待、ドイツ・オーバーハウゼン国際映画祭優秀賞受賞、オーストラリア・ブリスベン国際映画祭招待、カナダ、バンクーバー国際映画祭招待、フィンランド、タンペレ国際短編映画祭招待、ニュージーランド映画祭招待、ドイツ、ヨーロピアン・メディア・アート・フェスティバル招待
顔のない男についての映画。手と足をロープで縛られた不具の男は、白い部屋の中で微動だにしない。妄想に取りつかれた男は、改造された私の自我でもある。自己の内面を表した部屋の中の奇妙な場面の数々。記憶と悪夢と、暴力的イメージを関連づけることを試みた。(TI)
『ギ・装置M』1996/6分/カラー/サイレント/出演:森村泰昌
1996年 横浜美術館、森村泰昌展「美に至る病女優になった私」で公開、アメリカ、ワシントンDCレズビアン&ゲイ・フェスティバル招待、オランダワールドワイド・ビデオ・フェスティバル招待、アメリカ、オリンピア映画祭招待、オーストラリスブリスベン国際映画祭招待、オランダワールドワイド・ビデオ・フェスティバル招待、アメリカ、オリンピア映画祭招待、オーストラリスブリスベン国際映画祭招待
1996年に横浜美術館で開催された、森村泰昌展のために制作された。「7年目の浮気」のマリリン・モンローに扮した森村泰昌をモデルに撮影。森村、モンロー、女優、偽装、虚飾、セックス、死といったキーワードから受けるイマジネーションを映像化した作品。
『モノクローム・ヘッド』1997/10分/カラー/音響:稲垣貴士
97年韓国、釜山国際映画祭招待、バンクーバー国際映画祭招待、アメリカ、オリンピア映画祭招待、ロッテルダム国際映画祭招待
唐突に目に飛び込んでくるのは、空気を切って野球のバットをブンブン振る少女の姿だ。そのスピードの速さ紙作者がこれまで作ってきた映画制作のリズムにも思える。あるいはまた、ティーン・エイジャー達の狂気の象徴か、伝説の生き物を呼び出す儀式か?(中島崇)
『静かな一日』1999年/15分/カラー・モノクロ/サイレント
死の幻影におびえ続けている女が迎える最期の一日という設定で、彼女の行為や彼女に見える世界を描く。この作品は、芥川龍之介の晩年の小説「歯車」から強烈なインスピレーションを受けている。絶望的な死への道のりで男が見る、静かだが狂気に満ちあふれた様々な風景にいたく感動し、私もこんな世界を映像で作ってみたいと思った。(TI)
『めまい』2001/カラー/11分/音響:木津裕史/絵画:住山達也
前作『静かな一日』のラスト、鉄橋の上で自分に8ミリカメラを向ける女の子は、映画で直接的には描かれていないが、投身自殺をはかる。その様子を偶然見ていた二人の女の子のもう一つの壊れた心の状態を描く。職業がら接することの多い若い人達の心の病や、私自身の最近よく感じる精神状態の不安定さから沸いてくる様々なイメージを繋いでみた。(TI)
『静かな一日・完全版』 2002/ビデオ/カラー/20分/音響:稲垣貴士
03年ローザンヌ・アンダーグラウンド・フィルム&ミュージック・フェスティバル実験映画最高賞
1999年制作の『静かな一日』は、生と死の間を揺れ動く少女の不安を描いた作品で、その当時の私自身の不安定な精神状態を強く反映している。あれから3年経ち、冷静にこの作品を見直していく中で、私は一つのアイデアを思い付いた。それは『静かな一日』という映画を撮ろうとしている少女という設定に変えてしまうというもの。ラストの彼女の投身自殺はほんとの出来事なのか、それとも彼女が作ろうとしてる映画の中の出来事なのか判然としないという結末にすることで、溶け合う虚実、世界の曖昧性という最近の私のテーマを結実させたい。 (TI)
● 特製パンフレット「イルミネーション・ゴースト」
B5判24P/『SPACY』『モノクローム・ヘッド』イメージ/浅田彰、西嶋憲生、かわなかのぶひろ、港千尋/伊藤高志フィルモグラフィ/伊藤高志プロフィール ※イメージエフのみの特典 |