DVDの内容紹介
●近年、ラテンアメリカの多くの国で「モンサント法」と呼ばれる法案が登場しました。この法案は伝統的に行われてきた農民による種子の保存や交換を実質的に不可能にし、毎回企業から種子を買うように強いるものです。公共の財産であった種子が、少数の多国籍企業の知的財産として独占される危険があります。
これに対し、農民を先頭に先住民族、女性、市民など多くの人びとが声をあげ、反対運動が起こりました。多国籍企業による種子や農業の支配のもくろみ、それに対する人びとの抵抗、さらに人びとの種子を守る活動の発展を本作品は描きます。コロンビア、グアテマラ、コスタリカ、チリ、アルゼンチン、ブラジルなどの8力国の団体やNGOによって制作されました。
ラテンアメリカでの人びとの闘いは、日本の状況に大きな示唆を与えてくれます。
日本では2018年3月末に「主要農作物種子法」が廃止となります。その目的は、民間企業の利益のために公的な種子制度を壊すことと言えます。食の上流(種子)から下流(流通)まで多国籍企業が握ってしまえば、生産者と消費者の顔の見える関係を作ることは不可能に近くなります。
種子を奪われることは基本的な人権としての食料主権を奪われることにつながります。この危険から私たちの食、社会、未来を守るために何をすべきか。この映画が多くの方の行動へのきっかけになることを願っています。
●コスタリカでは1999年以来「植物の新品種の保護に関する国際条約」(UPOV)に農民や先住民族が反対してきた。2009年、米国との自由貿易協定によって自動的に批准が強いられたが、人びとの運動は種子を奪う国内法を拒み続け、残された生物多様性を守るためUPOVを推進する国立種子事務所を提訴する。
●2003年、ブラジル。多国籍企業の圧力の中で作られた種子法に画期的なクリオ一ロ種子条項が誕生した。クレオール種子とは農民が地域の環境に適応させ、発展させてきた種子。農民や市民、研究者が全国で進めるアグロエコロジー運動がその重要性を政府に認めさせ、種子制度への適用除外を勝ち取った。
●2012年、コロンビア議会はUPOV1991を承認する国内法可決。続いて農牧研究所は種子の生産や流通を管理する970決議を承認。同研究所は全国で種子を押収し2O10〜13年で400万キロ以上の種子が押収された。農民の激しい抵抗により政府は施策を一時凍結したが、農民の種子の権利は受け入れられていない。
●グアテマラのマム地方では、女性たちが種子の採り手と守り手となる。種子を集め、持ち寄り、種子バンクをつくり数多くの種子を保存していくのだ。先住民族の間では祖父や祖母は、子孫にもっとも神聖な命である「祖先の種子」を引き継ぐ。「種子は私たちのアイデンティティの一部です」と女性たちは語る。
●ホンジュラスでは、人びとがクレオールの種子銀行を地域につくり、多様な品種の種子を保存している。アグロエコロジーにも対応し、災害時に農民の助けともなる。手頃な値段で種子を売り、収穫時に返済する条件で貸付けも行う。種子の交換も可能で、農家は債務に悩まされずに種子を確保できる。
●「国家が多国籍企業とともに進める、農産物輸出とモノカルチャーの自然収奪型モデルなのか。それとも食料主権を軸にした小農民や先住民族の小規模家族農業モデルか?」。今こそ、その選択の時。多国籍企業に種子の権利が売り渡されないよう、農民だけでなく、消費者も声を上げなければならない。 |