DVDの内容紹介
●世界の流れは水道の最高詠歌へ
私たちが生きていく上で必須である「水」。 2010年、国連総会は安全な飲料水へのアクセスを人権 の一つとする原則を承認しました。 しかし1990年以降、世界の多くの国・自治体において水道サービスの民営化が進み、途上国では今も多くの人 が水にアクセスできないなど様々な課題が残っています。
日本では水道事業への民間参入の道が2000年以降に 開かれてきました。2018年7月、国会で水道法の改正審 議が行われ、民間企業が水道サービスに参入しやすく なるコンセッション契約が推進されることに懸念が高まっ ています。水道事業は民間企業が担うべきなのか、公 共サービスとは何か――? 日本の私たちに今、喫緊 に突き付けられている課題です。
こうした中、2000年以降、ヨーロッパをはじめ世界の多く の国・地域で注目すべき潮流が生まれています。それ は、「水道事業の再公営化」です。ベオリアやスエズなど の多国籍企業を有するイギリスやフランスなど、水道民 営化の歴史が長い国で、住民の運動や自治体議員の 問題提起によって、水道事業が再び公営化されていっ ているのです。長年の水道民営化によって、水道料金 が値上がりしたケースや、運営に関する情報が議会や 住民に開示されないなど、民営化の問題点がその大き な理由です。再公営化を果たした自治体の行政当局の 担当者や議員は、「民営化という幻想」を強く批判してい ます。
●債務危機後に民営化が迫られるケースも
一方、ギリシャやポルトガル、アイルランドなど、2008年 の欧州債務危機によって深刻な打撃を受けた国々には、 財政再建計画の一環として、水道事業の民営化が欧州 連合(EU)から提案されています。 再公営化によって水道サービスを取り戻した自治体と、 いままさに民営化を強いられている自治体――。同じ ヨーロッパにおいても、両者の姿は明確に異なります。 住民たちは「欧州連合も、自国の政府も、私たちの水道 を売り物にしようとしている」と抵抗を強めています。
こうした状況のもと、近年のヨーロッパにおける水道民 営化・再公営化の実態を描いたドキュメンタリー作品が、 『最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争』(UP TO THE LAST DROP-THE SECRET WATER WAR IN EUROPE)です。作品は4年間に及ぶ取材・制 作期間を経て2018年にギリシャで公開されました。フラ ンス、ドイツ、ギリシャ、ポルトガル、イタリア、アイルラン ドの6か国・13都市を綿密に取材し、自治体議員や市長、 研究者、NGO、アクティビスト、そして民営化を推進する 企業へのインタビューまで、多様な登場人物が発言して いきます。 |